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私はこの街に何の予備知識も思い入れもたいしたものは何一つ持っていなかった。
新宿センタービルを22:40発、倉敷9:00着予定の深夜高速バスは予定より20分遅い23時に発車した。
高速に乗ると渋滞状況やらなんやらがアナウンスされすぐに消灯された。
風邪と夏バテの吐き気を堪えながらバスに揺られること数時間、未だに神戸にすらついていない。
時計を見ると既に早朝の6時をまわっている。
結局倉敷に着いたのは16:30だった。
渋滞64kmという果てしない距離を知れた気がする。
計画も何もかもグダグダになったが会いたかった人達に逢う。
バカみたいに騒ぎ、真面目ぶって討論し、中学生のような愛を語りあった。
郷愁と時間の無限さ、そして有限さの中で幸福を知る。
この街を好きになった。
私が愛した倉敷は私の眼ではなく彼らの見てきた岡山県倉敷市だ。
楽しそうにお気に入りの場所を私に紹介する彼らの見た街だ。


私は別れの時を待っている。
彼らは私とは違う日常に帰っていく。
私だけが彼らの日常から去る。
皆昨日の寝床へ戻って今日も眠る。
彼らの想いが流れ込んでこの街は私の眼にも鮮やかに輝きだす。
吐き気とめまいと幸福とを一緒に味わいながら時計を確かめる。
押し潰すように照りつけていた夏の日差しはなりを潜め、優しい夕暮れが街を包み地面や家屋や、ビルを、駅を、人々を冷ませていく。
夏の余韻が私にだけ残っているような気がして熱気を目尻から追い出した。
初恋のような稚拙でたどたどしく、甘く、儚い感情も一緒に。
いつの間にかあたりは闇に落ちていた。
この眼でみた数倍の美しさを伴った街が親しげに手招きするようにテールランプがチカチカと光りビルの角へ消えた。
愛しい街はまだ目の前にあるが、本当に愛しいのはこの街を眺める彼らの優しい視線でしかないのだ。
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無題
僕は今日、毎日仕事帰りに当たり前に通り過ぎる、家から一番近所にある古本屋に、なんとなく導かれる感じで立ち寄ったら、いやはやなんと「ブラック・ボーイ」上下巻が棚の隅のほうで僕が来るのを待ってました。

時々、あなたや、僕に活力を与えてくれる割と限られた人達の眼が、思いもかけないものを僕に与えてくれることが、ありますなー。
純也 2008/06/08(Sun)21:25:20 編集
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