私は黄金色と呼ぶには少し黄味がかりすぎている麦畑にいた。
太陽が雲の間を縫って落ちていき山間から眩い燃える様な日差しを風景に注ぐ。
鉄塔の濃い影が私に向かって落ちてくる。
産毛が陽を欲しがって背伸びをする。
沈黙による金属製の耳鳴りがみるみる溶かされていき、大きな風の音が私を突き動かす。
同様にその風は鳥をも遠く彼方へ吹き飛ばすと、渦を巻いて暫くの間無邪気に空と戯れて消えた。
次の風はもっと親しげだった。
決して着地せずに空をぐるぐると回っていた。
次の風はより獰猛だった。
砂塵に体中を刺され目を開けることもままならなかった。
彼らが言ってしまった後にはもう当たり前のように闇が居座っていた。
電車の警笛だけが木霊する。
間もなく電車は轟音を伴って私の前を通過し、先程の耳鳴りを下車させてから見えなくなった。
おしまい。
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